【競馬】メンコの下に謎のマスク 好走の秘密は「ツボ」にあり!

三木俊幸

コンプレッションフードⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

馬に安心感を与える

それは2019年の秋競馬が始まった頃だっただろうか……。毎週末競馬場で取材をするようになり、ゴール前の撮影はもちろんのこと、暇を見つけてはパドックでも積極的に撮影するようにしていた。そんな時にメンコの下にウェットスーツのようにピッタリとしたマスクを着けている馬を見つけた。当時は「変わってるなあ」というくらいで気にとめなかったが、今では毎週多くの馬が着用するなど“今流行りの馬具”となっている。そんな謎のマスクについてご紹介する。

そのマスクは「コンプレッションフード」と呼ばれている。いくつかのメーカーで製造されているようだが、最も有名なのはHIDEZという海外のメーカーだ。馬の顔の3分の2を覆うこのコンプレッションフードは、騎乗中に緊張しやすい馬や馬房で落ち着きのない馬に効果的だと言われている。

ではなぜコンプレッションフードは馬に落ち着きを与えることができるのだろうか。その秘密は東洋医学に基づいた仕組みにあった。私たちが普段“ツボ”と呼んでいる経穴は、刺激を与えることで体調を整えたり、諸症状を改善させることができるポイントだ。

馬にも同様にツボがあり、このコンプレッションフードは顔にあるツボを圧迫することで、馬の心拍が下がる。その結果、馬に安心感を与え、落ち着きが出るという効果がある。実際に競走馬を担当する厩務員さんからは「ゲートの出が良くなった」という意見も出ているという。

重賞でも効果覿面

コンプレッションフードを着けた馬ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)

ⒸSPAIA(撮影:三木俊幸)


実際に重賞戦線で活躍する馬の中でも、スワンSを勝利したダイアトニック、メーカーは違うものの、ダイヤモンドSで重賞初制覇を果たしたミライヘノツバサ、マーチSを勝利したスワーヴアラミスなどがレースでもコンプレッションフードを着用して活躍を見せている。

ダイアトニックは、以前はゲートに課題があり、スタート後にバランスを崩すこともあった。しかし、映像を見て調べた結果、スワンSで初めて使用して以降の近5走ではスムーズにバランスよくスタートを切ることができており、先日の高松宮記念で抜群のスタートを決めたのは記憶に新しい。

現在はコロナウイルスの感染拡大予防するため、実際にパドックで間近に確認することは難しい。しかし、パドックを周回している映像を良く見ていれば、装着しているかを見極めることもできなくはない。入れ込み対策の馬具=ブリンカー、チークピーシーズというイメージが強いが、これからはコンプレッションフードの時代が来るのかもしれないので、覚えておいて損はないだろう。

今は競馬場に行きたくても行けない我慢の時が続いているが、近いうちにまた多くのファンで溢れ、賑わいを見せる競馬場の姿が帰ってくると信じている。そして多くの笑顔が溢れますように……。

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